お墓はその民族の死生観が形となって現れたものです。そのため、お墓の形や埋葬の形態はそれぞれの民族の文化や信仰によってかなり異なります。
ヨーロッパにおける最も有名な墓地は、パリにあるペール・ラシェーズ墓地だと言えるでしょう。同墓地は高台にある緑に溢れた庭園式霊園で、作曲家や画家など多くの著名人の墓があり、現在では観光名所のひとつともなっています。ヨーロッパでは、それまで教会の敷地に設置された教会墓地に埋葬されるのが主流でしたが、1804年に作られたこの霊園の影響により、霊園への埋葬が一般化しました。
ヨーロッパにおける埋葬方法は、カトリック国では土葬が主流ですが、プロテスタント国では火葬の割合が増えてきています。特にイギリスやチェコでは火葬率が70%を超えるまでになっています。
アメリカにおいても、かつては教会に併設された教会墓地に埋葬するのが一般的でしたが、都市化による墓地の不足や衛生面の問題などから、現在では広大な敷地を持つメモリアルパークなどに埋葬されることが多くなっています。メモリアルパークでは墓碑は芝生の植えられている敷地に平面に置かれています。墓碑が平面に置かれているのは、芝生の手入れが簡単で管理費が安いことが理由として挙げられます。遺体を埋葬した上に墓石を建てるのは日本と同じですが、アメリカでは家族単位よりも個人単位でお墓を建てることが多いようです。土葬に対する火葬の割合も年々高くなっており、現在は25%を超えると言われています。
中国では、人口の9割を占める漢民族は古くから土葬を習慣としてきましたが、革命によって現在の体制になると、政府は国策として火葬を推進せよという「殯葬改革(ひんそうかいかく)」を推進し始めました。ただ、農村部では依然として土葬が中心のようです。現在の中国は年間死亡者数が800万人以上にも上っています。そのため、政府は土地や資源の節約という名目により、散骨やネット供養などを積極的に宣伝・奨励しているそうです。
また、その一方で経済発展によって富裕化した層の中には、古い習慣に回帰しようとする動きも出てきており、墓地や死者の殉葬品を高級化するケースもあるそうです。
韓国では長年にわたり土葬の土饅頭型のお墓が主流でした。土饅頭の周りは芝生に覆われており石碑などはありません。しかし、近年の土地不足や人々の意識の変化によって火葬化が進み、日本と同じ石造りのお墓や費用の安い樹木葬なども急速に普及しつつあるようです。樹木葬については国民の4割が好むという統計もあります。
イスラム教において死は最後の日ではなく一時的な別れであって、死者はアッラーの審判の日に再び蘇ると信じられています。そのため、イスラムでは埋葬は全て土葬で行われます。また、墓石の形はそれぞれの地域によって様々ですが、墓は全て聖地メッカの方向を向いており、遺体の頭もメッカに向くように埋葬されます。
また、世界にはお墓を設けない文化もあり、インドやインドネシアのバリ島のヒンドゥー教においては火葬場で焼かれた遺骨や遺灰を川に流す水葬、チベットやインドのパールスィーと呼ばれるゾロアスター教徒は葬儀後に鳥に遺体を食べさせる鳥葬などが行われています。
ペール・ラシェーズ墓地
アイルランドのお墓
ルーマニアのお墓
アメリカのお墓
中国のお墓
韓国のお墓
トルコのお墓
インドの水葬