お墓には必ず文字が刻まれます。お墓に刻まれる文字は古くは経文や梵字だけでしたが、戦国時代になると武士階級が墓石に戒名や法名を刻むようになり、江戸末期になるとそれが庶民にも一般化して、墓石に俗名や本名が刻まれるようになりました。
現在、お墓に刻む文字については、家族合祀墓に見られる「○○家之墓」や「○○家先祖代々之墓」といったものが一般的ですが、最近は「家」という概念が希薄になったせいか、「先祖代々」といった文字を省くケースも増えてきています。
墓石に刻まれる文字は、宗旨・宗派によっても異なります。仏教の場合は「南無阿弥陀仏」や「妙法蓮華経」、神道の場合は「○○家奥津(都)城」、キリスト教の場合は十字架を刻むことがあります。また、最近では宗教や伝統に捉われない、故人の個性や思いを表した文字や詩、俳句などを刻む墓石も増えてきています。ただ、お墓に刻むには不向きな文字があったり、寺院や霊園によっては刻む文字について規制を設けていたりする場合もあるので注意が必要です。また、文字の書体については楷書体、行書体、草書体、隷書体、ゴシック体などがありますが、一般的に楷書体が用いられます。
墓石には棹石の正面以外にも様々な文字が刻まれます。一般的な家墓は、棹石の正面に家名、右側面に埋葬者の戒名、没年月日、享年、台石の左側面に建立年月日、建立者名が刻まれます。単独墓の場合は、個人や夫婦の戒名や俗名が刻まれます。